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ひなことの生活は楽しい反面、イヤなコトや面倒なコトだってたくさんある。その中で最高級にイヤなコトはずばり「真冬の散歩」である。私の住んでいる旭川市は北海道内でも有数の極寒・多雪地方で、冬になるとマイナス20度を超える日も珍しくない。また、寒いだけでなく道路状況も最悪である。路面は勿論アイスバーン。まるでスケートリンクのような状態だ。そのうえ道路わきには除雪した雪が積まれていて、高さは優に2メートルを越しているところも珍しくない。国道沿いはある程度きれいに除雪されているものの、ひなこの散歩コースの歩道は雪に埋もれており、車がビュンビュン通るすぐ脇を転ばないように気をつけて歩くしかない。だが、いくら気をつけて歩いていても、所詮ひなこの散歩。ヤツが道路の向こうはしに何かおもしろそうなモノを見つけて突然進路を変えると、ひとたまりもなく引きづられてしまう。もしその時タイミング悪く車が来ていたとしたら、間違いなく轢かれてしまうだろう。幸い、今までそのようなことは起きなかったが、冬の散歩が憂鬱なことに変わりはなかった。
ひなこを飼いはじめて3度目の冬、私は画期的な散歩法を編み出した。自宅から100メートルも離れていないところにあるパチンコ屋の駐車場で夜中に遊ばせるのだ。駐車場はおそろしく広い。少なく見積もっても80メートル×50メートル程の面積がある。また、パチンコ屋が閉店する夜11時以降には車が出て行って空き地になるだけでなく、除雪した雪が周りを囲んでいて天然の柵のようになっている。夜12時を過ぎると人通りもまったくなくなり、まさにうってつけのドッグランになるのだ。私は毎晩そこに通いひなこを遊ばせた。そこでは車に轢かれる心配もひなこに引きづられて転ぶ心配もないし、突然猛吹雪に襲われても1〜2分後には家に戻れるお手軽感もある。ひなこ自身も思う存分走り回れるうえに、大好きな「持って来い遊び」ができるので大満足のようだった。
そうして夜中の駐車場通いを続けていたある日、突然ひなこの様子がおかしくなった。いつもならどんなに爆睡していようと、声をかけるとすぐに目を輝かせて駆け寄ってくるひなこが、いくら呼んでもこちらに顔を向けるだけでベッドから出ようとしなくなったのだ。更に、ひなこの至福の時であるはずのご飯の時間にも立ち上がろうとせずに横になったまま首だけ伸ばして餌入れに顔を突っ込んでいる。おかしい。絶対におかしい!試しに餌入れを遠ざけてみると、ひなこは立ち上がって餌入れに向かった。だが、その足取りはひどく頼りなさげだ。後ろ足に力が入らないようで、立っているだけでもガクガクと痙攣している。そして餌を食べ終わるとよろよろとベッドに戻り、すぐにうずくまってしまった。大急ぎで動物病院に連れて行ったのは言うまでもない。
ひなこは「股関節形成不全」と診断された。レトリーバー系の犬に多く見られる遺伝性疾患で、股関節を形成する骨や筋肉が正常に発達しないことで起こる、股関節の変形や関節炎のことである。手術で骨を削ったり、人口関節を取り付けたりする以外に完治する方法はない病気なのだ。ラブラドール・レトリーバーという犬種を飼う以上、そのリスクがあるコトを知ってはいたものの、いざ現実として診断されると目の前が真っ暗になるほどのショックを受けてしまった。幸いひなこの場合、変形の度合いがそれほどひどくなく、軽度の炎症であった。暖かい部屋から寒い外に出ることの温度差と、連日の激しい運動がよくなかったらしい。冬期間の散歩は避けたほうがいいのだが、ひなこの場合、散歩をしないストレスによる弊害も考えると何とも言えない、そこは飼い主さんがうまく判断してください、と獣医さんに言われた。
結局ひなこは薬を飲ませて一日安静にさせただけで見事復活した。だが、変形した股関節が元に戻るわけでもなく、いつまた関節炎を起こすかはわからない、常に爆弾を抱えているような状態になってしまった。そのうち寒さが緩み、毎日散歩に出ても問題は起こらなくなったが、一年たてば冬はまた確実にやってくる。散歩に行かないストレスを取るか、関節炎の痛みを取るか・・・ひなこ、あんたはどっちがいいの!?と聞いてみたいものだ。ひなこ3歳の冬の出来事であった。
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