センチメンタリズム ![]() |
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幼い頃の私は「名犬ラッシー」というTV番組が大好きだった。主人公が危機にさらされたとき、聡明なコリー犬ラッシーが人に助けを求めたり、障害物を取り除いたりして救ってくれるのだ。所詮ドラマとは思っていたものの、心のどこかでは飼い主の危機のときには犬は何らかの異常を察知してくれるものだと思っていた。・・・だが、ひなこの場合、そのような心の機微を察知するような細やかな神経は持ち合わせていないようだ。 2002年3月、私は風邪をこじらせてしまった。39度を超える高熱の上に生来の喘息体質のため、ひどい呼吸困難を起こしたのだ。ゼーゼーと苦しげな呼吸音を発しながら、私は救急病院を調べ、タクシーを呼ぶために電話をかけていた。少しでも気を抜くとむせ返り、まともに話すこともできない。玉の汗を流し、体を丸めて電話をしている私に向かって、目を輝かせながら全力タックルを何度もくりだすひなこ。彼女はとても楽しそうであった・・・。 翌日、再度病院に行くために外出したものの、20メートルほど歩いただけで動悸が激しくなり、またも呼吸困難に陥った。はいずるように家に戻り休んでみたのだが、状況は一向に良くならない。却って悪化しているような気もする。このままでは死んでしまうかも、と不安に感じた私は救急車を呼ぶことにした。玄関先に倒れこんで救急車を待っている間、ひなこはおとなしくリビングにいた・・・と思ったら何か様子がおかしい。はいつくばりばがらリビングに行ってみるとひなこがいない。ヤツは私が動けないのをいいことに、寝室に入りこんでいたずらをしていたのだ。必死に呼び寄せる私をバカにするかのようにベットにあがりこんで聞こえないフリをかましているひなこ。彼女はとてもとても楽しそうであった・・・。 救急車で病院に運ばれたあと、私はそのまま緊急入院することになった。ダンナさんがお見舞いに来た時ひなこの様子をきくと、私の着ていた服の匂いをずーっと嗅ぎつづけているとのコト。彼女は彼女なりに寂しいんだ、と私は少し満足した。結局私は1週間ほどで退院することができたが、ダンナさんの仕事の都合で退院日の前日はひなこをかかりつけの動物病院に預けていた。退院するやいなや、8日振りにひなこに会える嬉しさにワクワクしながら私は動物病院へと迎えに行った。病院のスタッフさんに連れられてひなこはやってきた。ちぎれんばかりに尻尾を振りながら飛びついてくるひなこ。まさに感動の再会である。・・・だが次の瞬間、仕事に戻ろうときびすを返したスタッフさんにも嬉しそうに飛びついていた。スタッフさんに撫でられている満足げなひなこ。彼女はとてもとてもとても嬉しそうであった・・・。 大喜びでスタッフさんにじゃれついているひなこの後ろ姿を見ながら私は心に誓った。ひなこにセンチメンタリズムを求めるのは無駄だ、と・・・。 |